「平成28年度尼崎市防災総合訓練」に参加して(第562号 平成28年10月1日)
2016/10/27(木)
「平成28年度尼崎市防災総合訓練」に参加して
救急担当理事 新藤 高士
9月1日、「尼崎市防災総合訓練」が午後1時から5時までベイコム記念体育館で開催され、医師会も外部団体の一つとして参加した。出席したのは、森理事、新藤、急病診療所の沖課長補佐、西田事務係員、曲渕看護課長、大中看護係長の6名で、黒田会長・東副会長も、お忙しいところを見学に来られた。
今年は、例年の河川敷での訓練とは異なり、『地域防災計画に基づいた関係各機関の役割や連携体制を確認・検証するという目的での図上訓練』という形で開催され、我々医師会にとっても初めての経験であった。参加者は尼崎市職員を含めて、消防・警察はもとより自衛隊・海上保安庁、ライフライン関係各社、広報・放送関係、物流関係、市民団体など35団体約280名と非常に大規模な訓練であった。
図上訓練とは耳慣れない言葉であるが、いわゆるロールプレイング型の訓練である。訓練の始まりとともにその場でいきなり『9月1日(木)、13時30分にマグニチュード9・1の南海トラフ巨大地震が発生した、約110分後に約4mの津波が到来する』といった設定が発表された。発災から約1週間経過するまでの時間を、直後から3分後までのフェーズ①から45分後の淡路島に津波第一波到来(フェーズ②)、発災から○時間後…発災24時間後(フェーズ⑥)…約1週間後(フェーズ⑨)と9つに区切り、フェーズごとに様々に設定された被害状況が公表される。それに基づいて、そのフェーズにおいて自分たちの団体はどのような部署と連携を取りながらどのような行動をとるか、別の部署から依頼があればそれにどのような対応をするか決めて先方に返信する…といったシミュレーションを次々と行うのだ。
医師会が発災直後にイの一番に行うことは何だろうか。皆さんお考えください。
今年3月末に「尼崎市地域災害救急医療対策会議」が開催され、地震を想定した医師会としての行動マニュアルの策定が宿題として出された。実は尼崎市医師会では過去に「災害救護活動要項」が作成済みであり、先生方のお手元に2年に1回配られる「会員名簿」に綴じこまれています。しかしながら残念なことに、これでは時間経過に沿った行動が困難である。といった理由もあり、前述の会議以降、森理事が中心となって救急委員会で協議、策定し、8月に理事会にも上程された行動マニュアル(案)がある。今回医師会はこれに沿った形で行動を取った。
医師会が連携を取るのは、主に保健援護部。先方からは「市内医療機関の被害状況を知らせてください」や「受け入れができる透析医療機関を確認しました」「DMATが到着したので災害医療コーディネーターは参集するように」など…こちらからは「対策本部に医師○名が待機中」「死体検案ができる医師をどこへ派遣すればいいか」「JMAT○隊編成しました。派遣先を指示してください」などである。あっという間に、訓練時間の2時間半は過ぎた。
最後に「人と防災未来センター」の宇田川氏から検証結果の講評と医師会の参加も引き合いに出しての全国的にも珍しい大規模な訓練とのコメントがあり、市長の挨拶で訓練は終了した。
今回は救急委員会で策定した行動マニュアル(案)を検証する大変いい機会となった。現実には関係各所との連絡がスムーズにつくわけではなく、人も物もスムーズに移動できない。予定通りにいかないことだらけであろう。今回は歯科医師会、薬剤師会、看護協会の参加もなく、災害拠点病院・災害対応病院、民間病院の参加もなかった。今後は、「尼崎市地域災害救急医療対策会議」として医療関係の幅広い参集の元、お互いの連携の検証をする機会があってもいいのではないかと感想を持った。
熊本の大地震の記憶も新しい、防災訓練の前日には台風10号により東北・北海道で多くの被害者が出た。マニュアルがなければ、作っていなかったといわれる。マニュアルがあってもその通り行動できるとは限らない。災害の種類、発災の曜日・時刻・季節によって、全く被害も異なれば我々の行動も異なる。リアルワールドは想定外のことだらけであるので、いくら備えをしても憂いは残る。それでも「想定」をして「対策」しておかなくてはならない。
さて、医師会が発災後最初にすることは「災害対策本部」を立ち上げ「会員の被災情報の収集と保健所への報告」をすることです。会員の安否や会員施設の被災情報は救護所設置や医療救護チームの派遣要請の要否判断のために不可欠な情報です。諸先生方にお願いしたいのは速やかな安否情報の医師会への報告となります。発災直後には電話連絡が取りにくい、このために尼崎市医師会ではインターネット回線経由のメールを用いた安否確認システムの導入を進めています。PCが使えなくても携帯電話やスマホを用い、現在もっとも確実性が高いと思われるシステムです。尼医ニュース第560号でも鈴木理事が書かれていますが、まだ登録していないという先生方は、この機会に是非「安否情報確認システム」にご登録ください。自分が入っているかわからない、登録したつもりだけど登録できているかわからない、という方も、医師会事務局にお問い合わせいただければ事務局が丁寧に対応してくれます。会長は会員全員の登録を目指しておられます。是非、よろしくお願い申し上げます。