第11回 尼崎市民医療フォーラム開催(第575号 平成29年11月1日)
2017/11/25(土)
第11回 尼崎市民医療フォーラム開催
10・14
尼崎市医師会 医政委員会委員長 城崎 潔
衆議院議員選挙が公示され怪しい雲行きの世情のなか、心配された天気もなんとか持ちこたえ恒例の第11回尼崎市民医療フォーラムが、あましんアルカイックホール・オクトにて開催されました。今回は「このままでは老いたちに明日はない!~地域医療構想は明日の医療の青写真?~」と題し、少子・高齢化・多死社会を迎えるにあたり懸念されている医療崩壊を防ぐべく策定されていく地域医療構想が題材として選ばれました。
杉安保宣 尼崎市医師会理事の司会進行でフォーラムが開始されました。
主催者尼崎市医師会 黒田佳治会長は開会挨拶で、尼崎の高齢化率26.8%を紹介され、今回のテーマの地域医療構想が適切な医療供給体制を確保するためのもので、その設計に果たす医師会の役割、意気込みを表明されました。来賓代表 稲村和美市長には、尼崎市の医療・介護、他職種連携の取り組みにふれていただき、フォーラムの盛会を祈念した祝辞をいただきました。
今回はじめての試みとして第1部基調講演に先立って桂米朝一門 3代目桂歌之助師匠に「はじめに」として登場していただきました。〝尼崎のおばちゃん〟の紹介に始まり、ひと口話、落とし話を紹介していただき、会場はなごやかな雰囲気に暖まっていきました。
舞台の設営の間、参議院議員伊藤孝江氏の祝電が披露され、第1部の始まりです。
八田昌樹 尼崎市医師会理事の司会で、兵庫県医師会 医政研究委員会委員 堀本仁士氏による「地域医療構想ってなに?」と題した講演です。
地域医療構想は、近い将来必ずやって来る超少子高齢化社会に備えて、推計した需要に応じた医療供給体制を構築するというもので、昨年のテーマ地域包括ケアとも密接に関係しています。現在高齢化率23%ですが、2030年になると団塊の世代が75歳に到達し、高齢化率は32%になります。さらに団塊ジュニア世代が75歳に到達する2060年には高齢化率は40%と推計されています。総人口・若い世代の人口減少とあいまって極端な少子高齢化が進み、1990年には5人の若年世代が1人の高齢者を支えていたものが、今後どんどん支え手の人数は減少して行きます。患者は増えるがそれを支える人材や医療資源、財源は減少していくため今まで以上に医療の無駄を省き、地域の病院が連携して効率よく医療の提供が行われなければなりません。慢性疾患を複数もつ患者が増えていきますが、総人口は減少するため病院は増やせません。病気と共存しながら住み慣れた地域で生涯を通じて健康な日常生活を出来るだけ長く送れるようなシステム作りが求められています。そこで提唱されているのが地域完結型医療です。急性期病院、回復期病院、かかりつけ医で連携して患者を診ていくというものです。現在病床は一般病床と療養病床に分類されていますが、高度急性期、急性期、回復期、慢性期の4つに細分類し、将来的には高度急性期、急性期を減らし、慢性期も少し減らし、回復期を大幅に増やす構想です。総病床数は減るのですが、その分を在宅医療で対応する、そのためには地域包括ケアシステムの充実も必要です。地域医療構想の中核はこの病床の再編成と医療・介護連携の充実です。地域により人口や医療機関数などの事情が異なるためその地域毎に適切な計画の策定が求められています。
地域医療構想という耳慣れないものについてわかりやすく解説された講演でした。
第2部の舞台設営の間に、前・衆議院議員 中野洋昌氏から厚生労働委員会での経験も踏まえたスピーチをいただきました。
第2部は尼崎市医師会 中川純一理事、八田昌樹理事の司会でシンポジウム形式で行われました。コメンテーターはコラムニストの勝谷誠彦氏
シンポジストは中野洋昌氏(前・衆議院議員)、堀本仁士氏(兵庫県医師会 医政研究委員会委員)、齋田 宏氏(兵庫県立尼崎総合医療センター 副院長)、横田芳郎氏(尼崎市医師会医政委員会 委員)
シンポジウムの口開けに勝谷氏から兵庫県知事選 選挙戦の裏話などもからめて都市部、山間部の実情の差の紹介や、若い世代の政治への無関心などの問題提起がありました。
シンポジウムでは在宅医療の横田氏、救急医療の砦 総合医療センターの齋田氏、国政・医療行政から中野氏、県医師会から堀本氏、コラムニストの勝谷氏がそれぞれの立場から地域医療構想、病床再編、医療圏の統合、地域完結型医療・介護の充実にむけてのかかりつけ医の役割などについて発言されました。中川理事、八田理事の司会、シンポジストの本音を交えた発言で充実したシンポジウムとなりました。
最後に尼崎市医師会 東文造副会長の閉会の辞で第11回尼崎市民医療フォーラムは終了しました。