第8回 尼崎禁煙市民フォーラム「タバコがないとダメなあなたへ」(第582号 平成30年6月1日)

第8回 尼崎禁煙市民フォーラム
「タバコがないとダメなあなたへ」
5・19
尼崎市医師会地域保健担当理事 髙橋 洋二
第8回尼崎禁煙市民フォーラム「タバコがないとダメなあなたへ」が平成30年5月19日(土)、ハーティホールで開催されました。
司会の尼崎市医師会地域保健担当理事合志明彦先生のいつもの滑らかな、参加者の皆様が安心するような口調で会が始まりました。初めに尼崎市医師会副会長東文造先生からは、厚生労働省発表で喫煙率が女性は10%で横ばいも男性はこの禁煙フォーラムが始まった平成22年に38%であったのが平成29年は28%と減少傾向ではあるが依然、世界からみれば高い状況です。2020年の東京オリンピックに向け、受動喫煙を防止する健康増進法の一部を改正する法律案が3月9日に閣議決定されています。この会が喫煙者の皆様の禁煙に向けての新たなるスタートとなることを祈念します、と挨拶されました。次に尼崎市長稲村和美様からは尼崎市では平成28年5月28日に尼崎たばこ対策宣言が打ち出されており、本年6月には議会に条例として上程することの報告、皆様とともに尼崎市の健康づくりをしっかりとすすめていきます、とご挨拶を頂戴しました。
講演Ⅰ「尼崎市の禁煙対策の現状とこれから」は、尼崎市医師会公衆衛生委員会副委員長山前浩一郎先生が座長を務められ、尼崎市長の稲村和美様にご講演いただきました。国は東京オリンピックに向けてのたばこ対策、兵庫県は室内(分煙など)を主とした対策、尼崎市では路上での対策にも取り組んでいます。
尼崎市たばこ対策推進条例の概要は1.目的のなかに〝市民のみなさんと協力して〟の言葉が入っていることが特徴的、2.たばこ、喫煙、受動喫煙、路上喫煙、歩きたばこが定義されている、3.禁煙を支援し未成年者の喫煙防止に努め、健康に暮らせるまちづくりの推進、4.市内全域で歩きたばこを禁止する、安全で快適に暮らせるまちづくりの推進、5.路上喫煙禁止区域の指定、6.歩きたばこや禁止区域において喫煙者に対して、喫煙の中止等の指導、要請、7.学識経験者や市民等からの意見を聴きすすめていく、と説明されました。座長の山前先生、会場の橋本先生からは長年、禁煙フォーラムを続けてきた甲斐があり、ついに尼崎市が動きだされたことを大変、喜んでおられました。
講演Ⅱ「タバコとストレスの関係は?」は、尼崎市医師会公衆衛生委員会委員長長谷川吉昭先生が座長を務められ、前半は高知県立大学健康長寿センター特任教授の久保田聰美先生、後半は神戸動機づけ面接研究会代表で禁煙学会認定指導保健師の芹澤のり子先生にご講演いただきました。
タバコの知識として、副流煙には発がん性物質やニコチン、一酸化炭素等の有害物質が主流煙の数倍も含まれています。受動喫煙の影響を最も影響を受けるのは女性であり、障害を残す脳卒中が多く引き起こされています。また、サードハンドスモーク、これは残留受動喫煙のことで喫煙所から離れていてもタバコのにおいがする、生駒市役所では喫煙後45分はエレベーターの利用を禁止しています。(加熱式)新型タバコはニコチン摂取量が減少すると言われているが実際は満足感が得られるまで吸煙、結果的に摂取するニコチン量は同じ、かえって禁煙しづらくなっているという文献もあります。禁煙の場所では新型タバコも使用禁止、禁煙手段として推奨できない、喫煙を当然の風潮にしてしまう影響があるので紙巻きタバコと同じ規制が必要、とまとめられました。タバコとストレスでは、ストレス解消にニコチンの脳への「ほっとした」気分を求めているが、タバコがおいしいと思う感覚(精神的依存)は数分のみでそれ以外の時間は不快な感覚(身体的依存)で過ごしていることに気付いていません。それでもタバコがないとダメな方に相互理解の基盤づくり&会話のガイドに役立つ中心スキル、OARSを紹介されました。O:開かれた質問(どんなことがあって今日はこちらに来ようと思ったのですか?)、A:是認(その人のすでに持っている強みや努力を言葉にする)、R:聞き返し(その人の思いの事実、その背景の価値観の言語化)S:要約。講師の先生が会場に足を運ばれ数名の参加者の方に質問し対話され、実際にOARSを実戦されました。決して、禁煙の思いを押し付けず決めるのはあなた自身、相手の言葉を共感し受け止める、そして許可を得て情報提供していく、動機づけ面接法をご説明いただきました。会場前では呼気一酸化炭素濃度測定も行われました。昨年も参加された看護学生さんは昨年の濃度は35%であったが今年は11%に減っていたとのことで講師の先生はその努力を認めておられました。参考として呼気一酸化炭素濃度が10%以上は大気汚染の中にいるのと同じ濃度である、と長谷川先生にレクチャーいただきました。
最後に尼崎市医師会地域保健担当理事中川勝先生がこのフォーラムの目的は禁煙につながること、やめ方は自分で見つけることではあるがその動機づけになれば何よりです、と挨拶され閉会となりました。