運動器検診(二次検診)の一例報告 (第585号平成30年9月1日)

運動器検診(二次検診)の一例報告
潮江地区 整形外科医 東  文造
尼崎は全校医制で、皆さんも主任校医ではなくても、どこかの学校の協力校医をされているかと思います。平成28年度から学校健診の際に、「四肢の状態」検査、いわゆる「運動器検診」が導入されました。(詳細は尼医ニュース556号平成28年4月号をご覧ください。尼崎市医師会ホームページの会員のページからご覧になれます)「運動器検診」が入ったことで、整形外科医でない先生方はご苦労されている事とお察し申しあげます。運動器検診が始まってはや2年経過しました。その間、近隣の小学校の運動器検診で引っかかった子どもが、二次検診として複数名の子どもが当科にも受診されたかと思います。しかしながら、今まで当科では運動器の異常を指摘したことはありませんでした。
今年の8月の初めの頃に、お父さんと一緒に一人の男のお子さんが来られました。分かっているのは、持って来られた〝健康診断結果のお知らせ〟に、股関節・下肢 上肢・肩にまるが入っていることだけです。(図1)(まるの位置が微妙にずれているため、どこにまるを入れているのかよく分かりませんでしたが…)
まずは、上肢の肩、肘、手首の可動域のチェックを行いましたが、特に問題なしと判断しました。次に側湾症のチェックを行いました。前屈位での肋骨や腰に位置の左右差(図2)が若干あるものの、気になる程度ではありませんでした。実際私がその小学校の側湾症健診を行なっておりますが、今年はこの子を含めこの学校の男子で要精査と判断した子どもはおりませんでした。最後に下肢のチェックで、足のうらを全部つけてしゃがみ込み(いわゆるうんこ座り)(図3)させると、お尻をおろして行く途中で後方に転びそうになり、しゃがみ込むことが出来ませんでした。その後、診察台の上に寝かせて、股関節、膝関節、足関節の可動域をチェックすると、明らかに右股関節の関節拘縮がありました。そこで、股関節のレントゲン撮影が必要と判断し撮影しました。脊椎に関しては一瞬ためらいましたが、レントゲン台をスライドするだけで撮影できるので、結局脊柱のレントゲンも撮影しました。結果、股関節の方は構築学的異常は認めませんでしたが、脊柱のレントゲンで、先天性脊柱側湾症(半椎hemivertebraの癒合椎が左右1つづつなので、全体としてバランスはある程度保たれていた)(図4-1、図4-2)、二分脊椎(潜在性)の病名をつけ、小児整外科専門病院に受診させるべく、紹介状を書きました。
この症例での感想は、〝運動器検診は決して無駄なことをしているのではなく、役に立っているではないか…〟というものでした。
学校医の先生方には多大なご苦労をおかけしているとは思いますが、ロコモティブシンドロームに移行する可能性のある〝子どもロコモ〟の発見・予防に向けて、ご協力の程お願い申し上げます。