令和6年度 保健懇談会 報告 (第663号令和 7年 3月 1日)

令和6年度 保健懇談会 報告 2・20
(主催:尼崎市社会福祉協議会 尼崎市医師会)
尼崎市医師会 公衆衛生委員会担当理事 内藤 彰彦

令和7年2月20日に、尼崎市社会福祉協議会ほっと館の2階ホールに於いて、保健懇談会が開催されましたのでご報告いたします。
この保健懇談会は、尼崎市医師会による地域の保健と医療と尼崎市社会福祉協議会による地域福祉との連携の重要性を市民の方にご理解いただき、地域でお互いに協力し安心して暮らしていけるようにと開催されています。平成5年から30年以上続いている歴史のある懇談会であり、コロナ禍で3年のブランクはありましたが、昨年からこの武庫之荘にある「ほっと館」に場所をかえて開催されるようになりました。
まずはじめに、尼崎市社会福祉協議会から松原一郎理事長、尼崎市医師会からは髙橋理事より開会のあいさつがあり、なごやかな雰囲気で会が始まりました。司会は尼崎市医師会公衆衛生委員会委員長の山前浩一郎先生に務めていただきました。

 
1.「その腰痛、もしかして圧迫骨折!?〜内分泌専門医による骨粗鬆症の予防と治療〜」
講師 にしな内科・糖尿病内分泌クリニック 院長 仁科周平先生

高齢者の転倒による4大骨折は、上腕骨骨折、橈骨遠位端骨折、脊椎圧迫骨折大腿骨近位部骨折とあり、そのなかでも脊椎圧迫骨折、大腿骨近位部骨折は健康寿命や介護の問題に直結する怖い病気です。
高齢者の転倒による骨折は多くの場合、骨粗鬆症が伴っています。骨粗鬆症は骨密度の低下、劣化が原因で骨が弱くなり骨折しやすい状態になります。骨密度は年齢とと共に低下し、女性のほうがホルモンバランスにより低下傾向ですが、高齢になると男性にもおこりうる現象です。骨粗鬆症は加齢・ホルモンの低下以外にもステロイド、一部の糖尿病薬、利尿薬、胃薬、抗凝固薬、睡眠薬などの薬剤によるものもあります。また、生活習慣病、長期臥床、先天性の疾患、などによる二次性骨粗鬆症もあります。
骨粗鬆症の症状は特にないため、骨折がないと気づかないことも多く、症状のないうちから予防・治療を始めることが大切です。骨粗鬆症を調べるには骨密度測定の検査があります。測定方法には全身DXA(デキサ)法、前腕骨DXA法、MD法、超音波法などがあります。
骨折の予防には1)下半身の筋力強化をし、日常生活で段差に注意し転倒しないようにする。2)骨密度・骨質の強化できる食事、運動の習慣をもち、骨折予防効果のある治療薬を使い、骨に悪影響のある薬をなるべく中止し骨を丈夫にする。
この2つが大事です。その他治療に欠かせないのがビタミンDであり、体内のビタミンDの80%〜90%は紫外線照射によって皮膚から作られるので1日15分は太陽の光を浴びることが大切です。ビタミンDの推奨摂取量は高齢者で10μg/日で、日本人高齢女性の90%以上は食品摂取だけでは不足となっており、ビタミンD製剤の使用がすすめられます。
にしな内科・糖尿病内分泌クリニックでは、糖尿病・内分泌疾患とともに骨粗鬆症の予防・治療にも力を入れています。疾患についてのYouTube配信もしているようです。

 
2.「フレイルと病気のリスクとリハビリテーション」
講師 社会医療法人愛仁会 尼崎だいもつ病院 院長 稲本 真也先生

フレイルというのは、健康状態と要介護状態の中間の状態のことです。多面的な概念であり、身体的フレイル、心理的認知的フレイル、社会的フレイル3つの特徴があり互いに関連し合っています。フレイル自体は病気ではないが、介護状態になりやすく高齢者の健康状態に大きな影響を及ぼします。病気がきっかけで生じることがあり、フレイルは病気のリスクを高めます。
心不全患者のフレイル領域を持っている割合は高いが、心臓リハビリテーションの効果は高く、心不全による入院が4割減少する、死亡率が低下する、再入院のリスクが低下するなどのメリットがあります。肺炎死亡者に占める65歳以上の割合は97.1%と高く、高齢者と肺炎は密接は関係があり、高齢者が肺炎で入院するとADLが低下し認知症のリスクが2〜3倍に上昇します。肺炎はフレイルのきっかけになります。(フレイル予防は肺炎の予防になりうる)認知症の人はフレイルの割合が高く、フレイルの人は認知症になりやすく、進行が早いと言われています。
認知症には運動習慣が大事で運動により認知症の危険度が低下します。
フレイルの対策としては、1.栄養(バランスの取れた食事・低栄養状態にならないようにタンパク質摂取をこころがける)、2.運動(運動習慣をつける)、3.社会参加(人とのつながり、人との交流を心がける)、4.健康管理(日々の体調管理に注意する、相談できるかかりつけ医を持つ)が大切です。
尼崎だいもつ病院は、デイケア・通所リハビリテーション、心臓リハビリテーション、通院リハビリテーション、認知症外来に取り組んでおり、今後2025年4月にフレイル外来を開設する予定だということです。
講演の先生方は丁寧にわかりやすくお話しされ、参加者は熱心に聞き入っていました。講演後には一般の方からもたくさんの質問があり、骨粗鬆症・フレイルへの関心の高さが伺えました。この日は雪が舞う非常に寒い天気でしたが、尼崎福祉協議会から8名、尼崎市医師会からは10名、一般の方は20名で合計38名の参加がありました。
司会の労をお取りいただいた山前先生、ご講演をいただいた仁科先生、稲本先生、ありがとうございました。当日ご参加いただいた尼崎市医師会会員の先生方にもとても有意義な保健懇談会となりました。