第9回尼崎市民医療フォーラム(第551号 平成27年11月1日)
2015/11/01(日)
(第551号 平成27年11月1日)
広報委員会委員長 尾上 正浩
秋晴れの中アルカイックホールオクトで第9回尼崎市民医療フォーラムが開催された。テーマは「それってボケなん?」─なったらどうする認知症─、 重たいテーマにもかかわらず多くの聴衆を集め関心の高さがうかがわれた。9回目のフォーラムも第1回から連続してコメンテーターの勝谷誠彦氏にご参加いた だきフォーラムを盛り上げていただきました。今回も尼崎市医師会は尼崎に勝谷さんを絡め取ってしまいました。本当にありがとうございました。
総合司会・進行の尼崎市医師会理事 杉安保宣氏でフォーラムは始まった。
尼崎市医師会会長、黒田佳治氏の挨拶の中で認知症に結びつく生活習慣病の予防、治療の大切さを説明された。イギリスで認知症が減っている理由として生活習慣の予防が奏功している事例が紹介された。
来賓挨拶では 尼崎市医務監の清水昌好氏が尼崎市長のご挨拶を代読、2025年問題にむけた尼崎市の取り組みについて述べられた。
第1部は「ぼちぼち行きましょ、認知症」国立長寿医療研究センター物忘れセンター センター長 櫻井孝氏の講演が行なわれた。高 齢者の15%、90歳を超えると90%以上が認知症になり、風邪よりも多い疾患であることが示された。日本の認知症のケアは世界でもトップレベルであり、 介護制度はドイツと日本だけの制度である。
急速なスピードで高齢化社会を迎える我が国にとって認知症対策は喫緊の課題であり、新オレンジプランと銘打った基本方針のもと12省庁が横断的に7項目を 柱に相互協力する取り組みが紹介された。認知症のケアについては、在宅で過ごすことを基本とする、治療のゴールが見えにくい病気であるが、これまでの生活 を維持することをゴールに、生活機能の低下をおさえて介護保険などのサービスを使ってサポートする。また認知症を抱える家族の負担にも触れ、周囲の認知症 の理解が必要で、認知症物忘れ教室などに参加して理解を深めることが大事である。疲れ切った家族が少しの余裕を持つことができて、認知症患者さんが幸せに 生活できる環境作りが大切である。以前は痴呆症と言われた病気への偏見は人々の中に根強く残っているが病気の知識を得ることでそれが減っていく。認知症は 早期発見が大切で、早期発見の症状として①服薬管理ができなくなる②料理ができなくなる、料理の段取りができない、食材購入で重複がみられる、例として冷 蔵庫にたくさんの牛乳やたくさんのパンがはいっている③買い物の際¥1,030の支払いで、¥10,000札を出す、日常の細かい数字の計算が困難にな る。薬物治療は数多くの治療薬候補は挙がったが、現在使用できうる治療薬は4種類である。その治療薬は進行を止めることこそ出来ないが、経過を後ろ倒しに することができる。研究面では認知症発症の15年前からすでに脳の変化は認められており、発症するまでの期間の予防の必要性を説明された。例として85歳 で亡くなられた修道女の症例が示された。生前明晰であった女性だったが女性の死後、脳には明らかなアルツハイマーの所見が認められた。つまり脳に病変は あっても病気は発症しなかったということだ。最後に精神活動、余暇活動を充実させて清濁併せ呑むように多くの人と付き合うことがこの病気に打ち勝つ方法で あると結ばれ講演を終了された。
第2部はシンポジウム形式で行なわれた。
司会
尼崎市医師会理事
新藤高士
尼崎市医師会理事
八田昌樹
シンポジスト
中野 洋昌 氏
(衆議院議員)
櫻井 孝 氏
山福 尚子 氏
(中央会訪問看護ステーション所長)
中川 純一 氏
(尼崎市医師会理事・認知症サポート医)
コメンテーター
勝谷 誠彦 氏
勝谷氏のオープニングトークでは井戸端会議の復活で認知症予防をと呼びかけられた。フロアが温まったところでシンポジウムが始 まった。現場からの声として中川氏、山福氏より認知症の患者さんやそのご家族との関わり、かかりつけ医、認知サポート医を端緒とした早期発見予防の重要性 が紹介された。
高齢者の自動車の交通事故が問題となっている運転免許返納の問題から、自動運転などの近未来のテクノロジーについて幅広く多岐にわたって盛りだくさんの内容であった。
これからの尼崎市の認知症対策の取り組みについて、国は地域に対策を丸投げする形であるが、地域包括医療ケアを中心として地域のちから、世代を超えたちからの必要性が認識された。
最後に尼崎市医師会副会長 東文造氏の閉会挨拶で盛況のうちにフォーラムが終了した。